概要
薬物療法以外に対処法がないと言われていた病気への自分でできる新しい対処法
《対人関係療法でなおすシリーズ》の3冊目。
「双極性障害」(=「躁うつ病」)とは、
気分の高揚とうつ状態とが繰り返し訪れる病気である。
単極性のうつ病と誤診されたためにうつがなかなか治らなかったり、
病気ではなく性格の問題だとされて、
きちんとした治療を受けられずに何年も過ごしている患者さんも多い。
また、きちんと診断されても、これまでは薬物療法しか有効な治療法がなかった。
本書では、「対人関係」と「社会リズム」という、
この病気を発症させる二つの大きな要因に焦点を当てて、
薬物療法以外に、自分自身でコントロール可能な方法を日本で初めて紹介する。
目次
第I部 双極性障害を患うということ
第1章 双極性障害という病
第2章 双極性障害と社会リズム
第II部 対人関係・社会リズム療法(IPSRT)の進め方
第3章 対人関係・社会リズム療法とは
第4章 社会リズム療法
第5章 対人関係療法
第6章 双極性障害対策チームを作る
ネタバレ感想
双極性障害とは?
本書「はじめに」より
現在、双極性障害(躁うつ病)に、今までにないほどの注目が集まっています。その理由はいくつかあると思います。以前よりも双極性障害の治療薬の選択肢が広がったこともあります。また、難治性のうつ病として扱われてきたもののなかに、実は双極II型障害が少なくないということが注目されるようになってきたこともあります。そして、何と言っても、双極性障害が、人生に深刻なダメージを与えうる病気であるという認識が共有されてきたことが大きいと思います。
従来より「躁うつ病」として知られてきた双極I型障害では、躁状態のときに気分が著しく高揚し、「自分は偉い」「自分はすごい」などと思う状態になり、エネルギーが高まり、現実検討力が乏しくなるため、浪費や、びっくりするような投資、対人関係のトラブル、性的逸脱など華々しい行為が出現し、その結果として職を失ったり周囲の人たちとの関係が断絶してしまうこともあります。
躁状態の最中には気分のよさを感じていても、落ち着いてみると、自分が「しでかしてしまったこと」にどうしようもない罪悪感と恥を感じることにもなります(そのときにはうつ状態になっていることも多く、この感じ方は文字通り「死にたいほど」にもなります)。自分の社会的信用や生活環境が崩壊してしまったことに気づくこともあります。また、うつ状態は本人にとって本当に苦しいものですが、双極性障害のうつ状態は躁状態よりも回復に長い時間がかかり、先の見えない苦しさをもたらします。
当ブログ関連記事
対人関係・社会リズム療法とは?
水島広子さんのワークショップを受けた方のYouTubeがありますので、参考まで。
社会リズム療法とは
社会リズム療法とは──S R Mに記録する 「対人関係 ・社会リズム療法 ( I P S R T ) 」のうち 、 「社会リズム療法 ( S R T ) 」の部分は 、基本的に 、 「 S R M (ソ ーシャル ・リズム ・メトリック ) 」という表を用いて進めていきます 。
双極性障害の治療において用いられているのは 、 S R M─Ⅱという第二版です 。
S R M─Ⅱには 、一七項目のフルバ ージョンと 、五項目の簡易版があります 。
それぞれでチェックしていくポイントを表 4と表 5に示します 。
対人関係療法とは
対人関係療法 ( I P T )とは 、米国の精神科医クラ ーマンらによって一九六〇年代末から開発された期間限定の精神療法で 、現在では 、認知行動療法 ( C B T )と並んで 、エビデンス ・ベイストな (科学的根拠に基づく )精神療法の双璧をなしています 。
* G e r a l d L . K l e r m a n対人関係療法は 、 「単極性うつ病 」に対する治療法として開発されましたが 、その後 、 「不安障害 」や 「摂食障害 」など 、さまざまな障害に有効であることが示されてきています 。
それぞれの障害に合わせて少しずつの修正が行われてきていますが 、 「双極性障害 」向けの修正版である 「対人関係 ・社会リズム療法 」は 、対人関係療法の修正のなかでは最もドラスティックなものであることが知られています 。
対人関係療法は 、もともとは 、 「うつ病になる前の人にどんなことが多く起こっているのか 」 、そして 「治療のなかのどんな要素がよく効くのか 」という研究から始まりました 。
そして 、
( 1 )うつ病になる前には 、対人関係上の問題や変化が多く起こっている
( 2 )うつ病の経過は身近な対人関係の質に大きく左右される
( 3 )病気になることによって身近な対人関係も影響を受ける
という観察から 、体系的にまとめられたのが 「対人関係療法 」という治療法です 。
ですから 、何らかの仮説に基づく治療法ではなく 、徹底的に患者さんの現実を観察して作られた常識的な治療法であると言えます 。
感想